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女性の生き方 in ドイツ2

女性

 

今日は、とても素敵なティーハウスをオープンして、
それを軌道に乗せて、
Bonn での人気店に育てた、パワフルな女性、Sさんのお話です。

(ちなみにBonn は、旧西ドイツの首都だったところで、
ベートーヴェンの故郷でもあります。)

私の日常でのひとつの楽しみは、素敵なカフェ&ティーハウスで
寛ぐことです♪

仕事が混んでいる時でも、そこでできる仕事を持ち込んで、
忙しさの中に、新鮮な風、そしてリラックスを入れることを
とても大切にしていますし、

自分のための寛ぎの時間、
時には友とのおしゃべりタイムなど、
その素敵な空間がある、お気に入りの場所があるということが、
私にとってとても大切なことです。

カフェ

 

人生の中で、転勤も含めいろいろな変化があった私にとって、
新しい場所でお気に入りのカフェ、お店を見つけることが、
その地に根をおろすための、大切なことのひとつだったのです。

2016年に引越しをして、その住まいでも幸い、
緑が素敵でスタッフさんもとても感じの良いカフェをご近所に見つけましたが、

このSさんがオーナーだったティーハウスは、前の住まいのときの、大のお気に入りでした。

細部にまで温かな心配りが感じられ、
素敵なインテリア、
そして丁寧に淹れられる、大きなポットに入ったおいしいお茶と
毎回違うカップでサーブされる丁寧さ、

生花を欠かさない小さな美の空間。
豊富におかれている雑誌や本。
ウエイターさん、ウエイトレスさんの輝いた笑顔。

色々な要素が、そのティーハウスを心地よく創り上げ、
まさに私にとってのパラダイスでした。

そこへ行く道々で生花を買ったときなど、
さっとそれに気づいてくれたスタッフさんは、
「入れる花瓶をお持ちしましょうか?」と聞いてくれたり、
細やかな心遣いもありました。

日本でなら、そういう心遣いはいろいろあるのかもしれませんが、
正直、ここドイツでは、そういうものはあまり期待できません。

(サービスという概念がちょっと違うのです。)

その人、その人にとっての大切な空間を提供すること、
それにこだわっているスペースは、
忙しい日常から行くと、ほっと息がつける場なのでした。

そしてそのSさんが、友人の知人であると知り、
Sさんとも、時々話をしたりする機会がありました。

とても堅実でありつつ、自分の世界を表現するという夢を叶え、
日々努力しながら、素敵なスペースを切り盛りしている彼女は、
まさに男性性と女性性を、最大に開いて活かしている女性と感じました。
そのパワフルさ、謙虚さ、熱心さにも感嘆の思いでした。

そして彼女がある時に言った言葉が、今も心に残っています。
順調に発展して来たそのティーハウス。
けれどその影には、やはり色々なチャレンジもあるわけで、
ある時期、とても調和的雰囲気をかもしていて好きだった
ウエイターさん、ウエイトレスさん達が、
まとめて10人近くも一気に辞めてしまうという事態がありました。

その話を後で聞いた時に、彼女が言っていた言葉です。

「私がこのお店をやっているのは、お金のためじゃないの。
それだったら、それまで勤めた安定のある、前の会社から
辞めたりしないわ。

お客さんが幸せな気持ちになってくれて、
一日の瞬間に、ふっとリラックス出来る、
そんな空間が創りたくてやっているの。
そのためには、やはり妥協出来ないこともあるのよ。

お茶だって、普通のところでは、コーヒーマシン用の
何度も沸かして沸かしてというお湯を使うの。
でもそれではおいしいお茶ははいらない。
うちでは、一回一回沸かして、お茶をその都度
丁寧に淹れさせていただいているの。

サービスの人にも、やはりそれなりの心配りを私は要求するわ。
それはとても大切な点だから、妥協できないのよ。」

統率者としての責任と、そして選択、決断を担う彼女。

時にはたとえ、一緒に働いてくれたウエイターさん、ウエイトレスさんと
対立して、そして残念ながら合意出来なくて、それで一時、大変な事態になったとしても、

彼女の中には、彼女のそのティーハウスとしてのビジョンが
確とあったのだろうと思います。

***

ここまで「過去形」で、書いてきました。

実は、3年ほど順調に育てた後で、彼女は経営陣から外れてしまいました。

実質的にみていたのは彼女でしたが、資金面などを担当する
他の人たちと、なんらか異議があったようなのでした。

引越しなどがあり、しばらく行かなくなっていた私は、
かなり経った後で、そのティーハウスの名前が変わってしまっていて、
あるいは彼女の姿が見えないことに、遅まきながら気づいて、
共通の友人より、聞いたのでした。

正直、私もとてもショックでした。

そのティーハウス イコール 彼女の姿が重なっていましたし、
オープンしたときからひいきにしてきたお客の一人として、
とても残念な気がしたのです。

けれど、フェースブックで前のティーハウスの名前のページを
先日見つけると、
そこには「これで終わりじゃないから、ね、皆さん♪」と書いてあり、

また、彼女の創造するオアシス空間を楽しめるときがきっと来る・・・
そう思って待っています。

プロとしての仕事には、あるいは私たちの人生には、

必要な時にはNOと言ったり、
あるいは、親しかった人と別れたり、
ある意味 let go する選択もあります。

他者にNOと言うことが、自分に対して、
自分のビジョンに対して、自分の信念に対して
YESということもあります。

友人も「彼女は求める基準が高いけれど、とてもフェアな人だよ。」と
言っていて、大切な人は、真実を見る目でちゃんと見てくれるものです。

彼女が信念とともに真摯に創る空間が、
そこに一時のオアシスを求めて集う人々を幸せにして、
喧騒から少し引いて、必要なゆとりを味わえる大切な場所として
輝いていたこと、

それは私たち、ファンの心に、今もそのままあるのです。

Sさんのこれからの健闘を祈り、
また彼女の新しい空間で、あの笑顔を見られることを、心より祈っています。

すっきりと潔い彼女の姿には、真摯に夢を歩む人の熱さがあり、
それは彼女の道が、世界への愛とつながる夢であるため、
情熱が湧き出て来ていたのだろうと思います。

ひとりひとりが世界へのビジョンを持ち、オリジナルな夢があり、
その夢を叶えるギフトを持ち、
その中で私たちは支えられたり、支えたりしています。

私にとっても、その個性をティーハウスに反映して
力強く歩む彼女の姿は、励みでもありました。

私がドイツに来ての一番の収穫は、
そんな、強くて芯のある女性の姿を見られることです♪

そしてそれは、今の変容激しい中懸命に過ごす、
日本の女性にも言えることですね。